十勝の凍てつく寒さで生まれる、氷の芸術。

道外の方が北海道の冬の景色を思い浮かべると、どっさりと降り積もった雪に包まれる風景を想像する方が多いと思います。けれど、実は同じ北海道でも地域によっては冬景色が違うことをご存じですか?日本海側は雪が多く降り積もる想像通りの地域ですが、十勝は雪が少ない地域になります。

 

北海道の中で雪の多い少ないに分かれるのは、北海道の中央に日高山脈が南北にのびているからです。日高山脈に湿った雲がぶつかり山の手前で雪を降らし、乾いた雲が山を越え十勝へやってくるため十勝は雪の日が少なく「十勝晴れ」と言われる晴天の日が多くみられます。

 

風もなく十勝晴れの青空が広がる日には、放射冷却現象が起こり十勝はとても厳しい寒さに包まれます。放射冷却現象とは、風のない晴れた冬の日に起こる現象です。雲があると地表の熱が雲で遮られますが、雲のない晴れた日は地表の熱がどんどん空に逃げていき気温がぐっと冷え込みます。日中の最高気温でもマイナス温度は当たり前。最低気温はー20度を下回る日も珍しくありません。十勝北部に位置する日本一寒い街で知られる陸別町ではー30度を下回る日も。十勝の冬は、凍てつく寒さという言葉がぴったりな地域です。

 

寒さが厳しい十勝の冬ですが、そんな冬だからこそ見ることのできる素敵な光景がたくさんあります。

 

海岸に打ち上げられた透明な氷塊が光り輝く「ジュエリーアイス」。

細かな樹枝の細部まで白く輝いて見える「樹氷」。

湖の厚い氷の中に無数の水玉模様が見える「アイスバブル」。

朝日を浴びてキラキラと輝きながら宙を舞う「ダイヤモンドダスト」。

キノコのようにあちこちから生えてくる⁉「キノコ氷」。

 

いろいろな気象条件が揃わないと見ることのできないものもありますが、

冬の十勝へ訪れた際は、厳しい寒さに負けず外へ出て氷の芸術を見に行ってはいかがでしょうか?

ジュエリーアイス

例年1月中旬~2月下旬頃に、豊頃町の大津海岸で見ることができます。十勝川の河口の氷が太平洋に押し出され、波にもまれて角が取れた透明な氷が大津海岸へ打ち上げられます。

白っぽいオホーツクの流氷とは違い、クリスタルのような透明さが特徴で、太陽の光によって更に輝きを増します。


樹氷

過冷却された霧などの水滴が着氷する現象を「霧氷(むひょう)」といい、中でも樹枝に着氷したものが「樹氷」です。樹氷は白色で、触るとすぐ崩れるほど繊細。風がなく寒の厳しい朝に見られます。

更別村には全国から写真家が訪れる有名な霧氷スポットがあります。通勤で郊外を通る十勝の人であれば、冬の朝の通勤で美しい樹氷を見かけることは珍しくありません。


アイスバブル

1月上旬頃から結氷した糠平湖で見ることができます。湖面の結氷が進む時期に、湖に沈んだ落ち葉から発生したメタンガスが浮上し、湖面の結氷と共に凍ってしまう現象です。

大小の氷の泡が湖の奥まで続く様は、長い時の流れと自然の神秘さを感じさせてくれます。

北海道各地でアイスバブルは見られますが、雪が降ると隠れて見えなくなってしまうので、降雪の少ない十勝の糠平湖は見られる機会が高いかもしれませんね。


ダイヤモンドダスト

聞きなじみのある冬の自然現象の一つ「ダイヤモンドダスト」。別名は「細氷(さいひょう)」といいます。

大気中の水蒸気が微小な氷の結晶となってゆっくり降下し、そこに陽の光が当たってキラキラ反射する美しい光景が現れる現象です。

厳しい寒さ、快晴、無風、適度な湿度が観測条件と言われていますが、条件を満たしていても発生するとは限らないので非常に稀で神秘的な現象です。

 

 


キノコ氷

アイスバブルが見られる糠平湖でこちらも見ることができます。

人造湖である糠平湖の湖底には、大きな切り株が多く、発電のため放水すると水位が下がり、切り株が顔を出します。その際に切り株の上に氷が残されキノコのような姿となります。

キノコ氷は2月頃、湖のあちこちで見ることができます。北海道遺産に指定された冬に現れる幻の橋「タウシュベツ川橋梁」もこの時期に見ることができます。